直販投信の各ファンドの信託銀行(受託銀行)を調べて見ました。
直販投信が利用している信託銀行は一つではありません。
各ファンドの信託銀行やその信託報酬の取り分を比較していきます。
同じ会社でもファンドごとに信託銀行が違う場合もあることも分かりました。
投資信託おける信託銀行(受託銀行)とは
まずは、投資信託において信託銀行とはどのような役割を担うのかをみていきます。
信託銀行とは
信託銀行とは、通常の銀行業務(預金・貸付など)に加えて信託業務を行なうことができる銀行を指します。
信託業務とは、信託会社などが、個人や企業などの法人が持つ財産を信託の設定により受託者に移転させて、その財産を管理・運用することです。
また、遺言の保管や株主名簿の管理などの業務も行なっています。
投資信託の信託銀行とは
投資信託において、信託財産の管理・保管を担うのが信託銀行の役割です。
投資信託の仕組み上、信託銀行のことを「受託銀行」や「受託会社」と呼ぶこともあります。
わたしたち投資家が出す資金は、運用会社が管理するのではなく、すべて信託銀行が管理しています。
信託銀行は投資信託の信託財産を管理してはいますが、自社の財産と信託財産は区分して管理することが法律で義務づけられています。
このような仕組みがあることで、万が一、運用会社や信託銀行が破綻しても投資家の信託財産には影響が受けないようになっています。
信託銀行は投資信託の安全性を高める仕組みのなかで、非常に重要な役割を果たしています。
なお、信託銀行は投資信託の信託報酬の一部を報酬として受取ります。
再信託先
投資信託の信託財産は、基本的に信託銀行で管理されています。
しかし、信託財産の管理がさらに別の信託銀行に管理委託(再信託) されているケースもあります。
この場合、保管や決済等は受託銀行で行なわれますが、信託財産の管理は再信託先の信託銀行となります。
調査対象の直販投信のファンド
独立系運用会社が運用するファンドのうち直販で販売しているファンドを調査対象としています。
以下の8社が運用する14ファンドについて調査しています。
- さわかみファンド(さわかみ投信)
- セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(セゾン投信)
- セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)
- ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス)
- ひふみワールド(レオス・キャピタルワークス)
- ありがとうファンド(ありがとう投信)
- 結い2101(鎌倉投信)
- ユニオンファンド(ユニオン投信)
- ザ・2020ビジョン(コモンズ投信)
- コモンズ30(コモンズ投信)
- 浪花おふくろファンド (クローバー・アセットマネジメント)
- かいたくファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- らくちんファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- コドモファンド(クローバー・アセットマネジメント)
信託銀行の調査方法
各ファンドの信託銀行は交付目論見書を見ることで確認していきます。
しかし、一部のファンドは再信託先まで記載していませんでした。
ですから、再信託先の記載がないファンドについては請求目論見書を見ることで信託銀行と再信託先まで確認しています。
また、同時に受託銀行が受取る信託報酬率も調べました。
結果:直販投信各ファンドの信託銀行
直販投信の14ファンドの受託銀行を調べた結果が以下の表になります。
ファンド名称(運用会社) | 信託報酬(%) | 信託銀行 | 再信託先 |
---|---|---|---|
さわかみファンド(さわかみ投信) | 0.1 | 野村信託銀行 | |
バンガード・グローバルバランス(セゾン投信) | 0.04 | 野村信託銀行 | |
セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信) | 0.04 | 野村信託銀行 | |
ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス) | 0.08 | 三井住友信託銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
ひふみワールド(レオス・キャピタルワークス) | 0.02 | 三菱UFJ信託銀行 | 日本マスタートラスト信託銀行 |
ありがとうファンド(ありがとう投信) | 0.1 | 野村信託銀行 | |
結い2101(鎌倉投信) | 0.03 | 三井住友信託銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
ユニオンファンド(ユニオン投信) | 0.03 | りそな銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
ザ・2020ビジョン(コモンズ投信) | 0.05 | りそな銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
コモンズ30(コモンズ投信) | 0.05 | りそな銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
浪花おふくろファンド (クローバー) | 0.03 | りそな銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
かいたくファンド(クローバー) | 0.03 | 三井住友信託銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
らくちんファンド(クローバー) | 0.03 | 三井住友信託銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
コドモファンド(クローバー) | 0.03 | 三井住友信託銀行 | 日本トラスティ・サービス信託銀行 |
※2020年2月22日現在の調査。受託銀行の信託報酬は一番高い値。
三井住友信託銀行は5ファンド
三井住友信託銀行は以下の5本の直販投信ファンドの受託銀行となっています。
- ひふみ投信(レオス・キャピタルワークス)
- 結い2101(鎌倉投信)
- かいたくファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- らくちんファンド(クローバー・アセットマネジメント)
- コドモファンド(クローバー・アセットマネジメント)
“三井住友”の名前がつきますが、三井住友銀行グループ(三井住友フィナンシャルグループ)の信託銀行ではありません。
三井住友銀行グループにはSMBC信託銀行があります。
三井住友信託銀行は、三井住友トラスト・ホールディングス傘下の受託銀行です。
非常に分かりにくいんですよね。
井住友信託銀行は再信託先が日本トラスティ・サービス信託銀行となっています。
そのため、実際の信託財産は日本トラスティ・サービス信託銀行にあることになります。
野村信託銀行は4ファンド
野村信託銀行が受託銀行となっている直販投信ファンドは4本あります。
- さわかみファンド(さわかみ投信)
- セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(セゾン投信)
- セゾン資産形成の達人ファンド(セゾン投信)
- ありがとうファンド(ありがとう投信)
比較的に早く募集を開始したファンドに野村信託銀行が多い傾向があります。
さわかみファンドが直販ビジネスを開始しようとした1999年、当時はどこの信託銀行も取り合ってくれず、唯一話を聞いてくれたのが日興信託銀行(現・野村信託銀行)だったようです。
そのような経緯もあってか、運用開始が早かった、さわかみ投信、ありがとう投信、セゾン投信のファンドの受託銀行は野村信託銀行です。
なお、野村信託銀行は、提携や合併などの理由で、これまで何度も名称を変更してきています。
日興信託銀行→日興シティ信託銀行→NCT信託銀行→野村信託銀行
りそな銀行は4ファンド
りそな銀行は信託業務も行なっており、以下の4つのファンドの受託銀行となっています。
- ユニオンファンド(ユニオン投信)
- ザ・2020ビジョン(コモンズ投信)
- コモンズ30(コモンズ投信)
- 浪花おふくろファンド (クローバー・アセットマネジメント)
かつては、りそな信託銀行として独立していましたが、りそな銀行に吸収されて現在に至ります。
りそな銀行の場合は、再信託先が日本トラスティ・サービス信託銀行となっています。
クローバー・アセットマネジメントは4ファンド運用していますが、浪花おふくろファンドのみりそな銀行が受託銀行となっています。
三菱UFJ信託銀行は1ファンドのみ
レオス・キャピタルワークスのひふみワールドだけが三菱UFJ信託銀行を受託銀行としています。
ひふみワールドは2019年10月に設定されたばかりの新しいファンドです。
レオス・キャピタルワークスが運用するもう一つのファンドひふみ投信は別の三井住友信託銀行でしたが、おそらくより有利な条件の信託銀行に変更したのでしょう。
ひふみワールドの信託報酬のうち受託銀行の取り分は、0.02%(税別)です。
さわかみファンドが野村信託銀行で0.1%(税別)、ひふみ投信が三井住友信託銀行で0.08%(税別)なので、ひふみワールドの受託銀行取り分がかなり低いということが分かるでしょう。
なお、 三菱UFJ信託銀行の再信託先は日本マスタートラスト信託銀行です。
受託銀行を調べてみて
直販投信14本のファンドを調べました。
実際、いろいろな信託銀行を使っていることが分かりました。
同じ運用会社でも受託銀行が異なる
同じ運用会社でもファンドごとに受託銀行が異なるケースもありました。
レオス・キャピタルワークスとクローバー・アセットマネジメントがそうです。
クローバー・アセットマネジメントは3つの運用会社が合併した経緯などが影響しているのでしょう。
レオス・キャピタルワークスは、新規に設定されたひふみワールドの信託報酬率が大幅に下がっています。
より良い条件を求めて、受託銀行を変えたのかもしれません。
信託報酬率の違い
信託報酬率を見るとファンドごとにかなり違います。
さわかみファンドやありがとうファンドなどの比較的は早く募集を開始したファンドは信託報酬率が高い傾向にあります。
当時は直販の実績もなかったわけですから、どこの信託銀行も相手にしてくれず、やっとの思いで日興信託銀行(現・野村信託銀行)に決まったそうです。
さわかみ投信の創業者は同時のことを「条件は日興信託銀行の言いなりとなったが、ともかく信託銀行が決まった。」と語っています。
このあたりの事情が、関係しているのでしょう。