直販投信の歴史について説明します。
直販投信には、歴史と言えるほど長い歴史はないのですが、どのような経緯で直販投信がここまで広まってきたのかを知って欲しいです。
「直販投信」ビジネスは30年近く前から存在した
投資信託を運用会社が「直販」する、この販売方法は最近始まったものではありません。
最近始まったものと思われがちですが、実は、直販投信は30年近く前から存在していました。
しかし、一度衰退した時期があり、ビジネスモデルを調整して再び発展してきた経緯があります。
法律上は、1992年から運用会社が投資家に向けて投資信託を直接販売することは認められていました。
そして、大手金融機関の系列運用会社により、投資信託を直販することは行われていました。
ですから、1990年代前半からいわゆる直販投信は存在していたことになります。
直販投信の衰退
しかしながら、この当時の直販投信は現在の直販投信とはちょっと違いました。
個人投資家向けというよりは、法人や機関投資家向けに販売されるものがほとんどでした。
やがて、この当時の直販投信は、顧客からの問合せ対応、目論見書などの郵送にかかるコストが見合わないという問題もあり、各社は直販ビジネスを縮小していきました。
このような経緯で、一度は日本で行われていた直販投信ビジネスは、2000年頃までに大きく衰退していくことになりました。
独立系運用会社による「直販投信」
すっかり衰退していった日本の直販投信ビジネスですが、別の動きが出てきます。
独立系の運用会社が直販投信ビジネスをはじめたのです。
その草分けとなったのが長期投資のパイオニアである澤上篤人氏が設立したさわかみ投信です。
さわかみ投信は、1999年8月に「さわかみファンド」の直販をはじめたのです。
しかも、「さわかみファンド」はこれまでの直販投資とは違って、法人や機関投資家向けではなく個人投資家向けに財産形成を手助けする運用商品として販売されました。
新しい直販投信の歴史がここから始まります。
増える新たな「直販投信」
さわかみ投信が直販投信のパイオニアとしてビジネスをスタートした後、いくつかの独立系有用会社が立ち上がり、直販投信をはじめました。
2004年9月にはありがとう投信が「ありがとうファンド」を設定しました。
また、2007年3月にはセゾン投信が「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」と「セゾン投資の達人ファンド」の2本を販売しはじめました。
その後も、いくつかの直販投信会社が立ち上げられています。
現在、8社の独立系運用会社による直販投信の会社が存在します。
- さわかみ投信
- ありがとう投信
- セゾン投信
- クローバー・アセットマネジメント
- レオス・キャピタルワークス
- ユニオン投信
- コモンズ投信
- 鎌倉投信
独立系運用会社による個人投資家を対象としたビジネスモデルは着実に成果を見せています。
大手が再び「直販投信」ビジネスに参入
ここにきて、大手運用会社が「直販投信」ビジネスに注目しはじめています。
そして、自ら直販投信ビジネスに参入する動きがあります。
2015年、「三井住友アセットマネジメント(現・三井住友DSアセットマネジメント)」が、大手運用会社で初めて本格的な直販投信事業に進出します。
その後、2019年には、「三菱UFJ国際投信」が投資信託の直販をはじめました。
まだまだ伸びしろがある「直販投信」
2000年以降、直販投信ビジネスは復興を見せています。
しかし、日本の直販投信ビジネスはまだまだです。
公募投資信託の残高で言えば、まだ全体の0.8%程度しかありません。
運用の先進国である米国では、投資信託の直販は主要な販売チャネルの一つです。
日本の直販投信には大きな伸びしろがあると言えるのではないでしょうか?